『鬼滅の刃』に登場する上弦の参・猗窩座の謎に迫ります。
数多くの命を奪ってきた鬼でありながら、なぜか女を殺さないという特異な行動を取り続けている猗窩座。
この不思議な行動には、どのような過去と理由が隠されているのでしょうか?
本記事では、猗窩座という鬼が抱える葛藤や、鬼になった理由に隠された心の傷を読み解いていきます。
『鬼滅の刃』のストーリーを深掘りしながら、「女を殺さないのはなぜか?」「鬼になった理由とは何か?」といった読者の疑問を解消できるよう、複数の視点から考察を重ねました。
作品をただ“観る”だけでなく、登場人物の内面まで理解したいという方には、きっと満足いただける内容です。
猗窩座というキャラクターの奥深さを知ることで、『鬼滅の刃』の物語はもっと心に刺さるはず。
ぜひ最後までお付き合いくださいね。
この記事に書かれている内容
鬼滅の刃の猗窩座が女を殺さない理由はなぜ?
猗窩座(あかざ)は上弦の参として恐れられる鬼でありながら、女性だけは絶対に殺さないという異例の行動を取り続けています。
この不思議な行動の背景には、鬼になる前の「狛治(はくじ)」という青年としての人生と、恋雪という少女との出会いと別れが深く関係しています。
鬼であるにもかかわらず「女性だけは殺さない」という選択は、鬼舞辻無惨から命じられたものではなく、猗窩座の心の奥底にある記憶や感情から自然と生まれたものと考えられています。
ここでは、彼が女性を殺さないと決めている背景や心理を、3つのポイントに分けて詳しく見ていきます。
猗窩座の恋雪への深い愛と哀しみ
猗窩座が女性を殺さない理由の根本には、恋雪という少女への愛情と、その喪失があります。
狛治という名の青年だった頃、彼は恋雪と出会います。
恋雪は病弱で、一人では生活もままならない少女でした。
そんな彼女を支え続けたのが狛治です。
毎日看病し、食事を作り、薬を届け、そばに寄り添う日々。
それは、貧しさと孤独にまみれた狛治の人生の中で、初めて「誰かに必要とされる喜び」を感じた瞬間だったのです。
狛治にとって恋雪は、守るべき希望であり、生きる理由そのものでした。
やがて恋雪の病状は回復し、二人は将来を約束するまでの関係になります。
ところが、狛治が父の墓参りに出かけていた間に、恋雪とその父・慶蔵が毒殺されてしまいます。
隣の道場の卑劣な仕打ちでした。
その瞬間、狛治の世界は崩れ落ちました。
「守る」と誓った相手を自分が守れなかったという現実が、彼を絶望と怒りの底へ突き落としたのです。
この喪失体験があまりにも強烈だったため、鬼となった後も「恋雪のような女性だけは、二度と傷つけてはならない」という想いが、彼の深層心理に刻まれたのでしょう。
恋雪の面影が、彼にとっての“殺してはいけない存在”の象徴になっているのかもしれませんね。
猗窩座が女性を殺さないのは自責の念
猗窩座の女性不殺は、明確な意識や理性によって行われているわけではありません。
鬼となった猗窩座は、基本的に人間時代の記憶をほとんど失っています。
にもかかわらず、女性だけは殺さないという行動を取り続けているのです。
この行動は、理性的判断というよりも、本能的な制御、つまり深層心理に刻まれた「罪悪感」によるものだと考えられています。
恋雪を守れなかった後悔。
「自分がもっと強ければ、彼女を救えたのではないか」という自責の念。
その記憶が意識の底に根付き、無意識のうちに「女性=守るべき存在」と認識させているのかもしれません。
このように、猗窩座は本能的な殺戮衝動よりも、「過去の痛み」によって行動が縛られている、極めて特殊な鬼と言えるでしょう。
実際に『鬼滅の刃』作中でも、女性との戦闘は描かれておらず、標的はすべて男性。
このことからも、罪悪感が自然と彼の行動を制御していると考えるのが自然です。
心理的なブレーキって、理屈ではなく「体が勝手に拒む」ってこと、ありますよね。
まさにそんな感じなんじゃないかと思います。
無惨の命令ではなく自主的な禁忌だった
猗窩座が女性を殺さない理由としてもうひとつ注目すべきは、それが鬼舞辻無惨の命令ではないという点です。
普通の鬼たちは無惨の支配下にあり、命令に絶対服従です。
ですが、猗窩座の場合は違います。
女性を殺さないというのは、無惨が「やるな」と命じたからではなく、猗窩座が自ら選んだルールなのです。
無惨は非常に冷酷な性格で、少しでも逆らう鬼はすぐに処分することで知られています。
にもかかわらず、猗窩座が女性を殺さないことについては、一度も咎めた描写がありません。
それは、猗窩座の戦闘能力があまりに高く、無惨にとって必要不可欠な戦力だったからです。
つまり、「結果さえ出していれば、手段は問わない」という無惨の考えにより、猗窩座の自主的な禁忌が黙認されていたと推測されます。
実際、猗窩座は「強者との戦い」に異常な執着を見せており、人間を食べること自体にはあまり興味がありません。
このような彼の価値観が、「女性は殺さない」というルールを自然に受け入れさせていたのでしょう。
「自分の中で絶対に破れないルールがある」って、なんだか人間らしくて、ちょっと切ないですよね。
鬼滅の刃の猗窩座が鬼になった理由はなぜ?
猗窩座が鬼になったのは、自ら望んだ結果ではありません。
大切な人を理不尽に奪われ、守れなかった自分への怒りと無力感、そして強さへの渇望が彼を追い詰め、やがて鬼舞辻無惨に出会うという運命へと導かれたのです。
この章では、彼がどのような人生を歩み、なぜ鬼にならざるを得なかったのかを具体的にたどっていきます。
単なる悪役では語れない彼の深い悲しみと葛藤に触れることで、猗窩座というキャラクターの本質が見えてきます。
父を救うための犯罪と自責の念
猗窩座――
人間時代の名は「狛治(はくじ)」。
貧しさと不運に満ちた人生のスタートでした。
狛治の父は病弱で、治療費や薬代がかさみ、生活は困窮していました。
まだ子どもだった狛治は、父を救いたい一心で窃盗を繰り返すようになります。
盗んだものは全て薬や食べ物。
誰かを傷つけたいという気持ちはありませんでした。
しかし、それでも犯罪は犯罪。
父は息子が罪を重ねてまで自分を助けようとしていることを知り、涙を流してこう言い残します。
「正しく生きなさい。迷惑をかけてすまなかった」
そして、自ら命を絶ってしまうのです。
この出来事は狛治の心に深い傷を残しました。
「父のためにしたことが、結局父を殺してしまった」
そんな罪悪感が、狛治の心を強く縛るようになります。
彼の中には、「もっと強ければ守れたのに」という悔しさが強く根を張っていきました。
ここから、彼の「強さ」に対する異常なほどの執着が生まれていくことになります。
このあたりが、猗窩座の人格形成に大きな影響を与えていることは間違いなさそうですね。
恋雪と慶蔵を毒殺された悲劇
流浪の末、狛治はある武道家・慶蔵(けいぞう)と出会います。
この出会いが、彼にとっての人生の転機となりました。
慶蔵は狛治の並外れた格闘能力を見抜き、自分の道場へと招き入れます。
そこで彼は、慶蔵の娘・恋雪と出会います。
恋雪は体が弱く、ほとんど寝たきりの生活でした。
しかし彼女は優しく、弱くても人を思いやる心を持った少女でした。
恋雪の世話を任された狛治は、彼女に少しずつ心を開いていきます。
そして気づけば、恋雪と過ごす日々が「かけがえのない宝物」になっていました。
やがて恋雪の体調は回復し、慶蔵は狛治に道場を継がせ、恋雪との結婚も認めます。
この瞬間、狛治は初めて“未来”を手に入れたのです。
しかし、それはあまりにも短い幸福でした。
狛治が父の墓参りに出かけていたある日、隣接する道場の者たちが恋雪と慶蔵を毒殺するという非道な行為に及びます。
狛治が帰宅した時には、二人はすでに冷たくなっていました。
狛治は絶望し、怒りに飲み込まれ、隣の道場へと殴り込みます。
そして、素手で67人もの人間を惨殺するという凶行に出ます。
「守る」と誓った相手を奪われ、「正しく生きる」ことを選んだはずの人生が再び踏みにじられた瞬間でした。
この出来事が、狛治という青年の精神を完全に壊してしまったのです。
たしかに、怒りと憎しみに染まるのも無理ないですよね。
このときの彼に、もはや正義も理性も残っていなかったのでしょう。
無惨との遭遇と鬼化の決意
全てを失った狛治は、放心状態のまま街をさまよっていました。
恋雪も慶蔵も、父も、未来も、全てを奪われた青年の目には、何も映っていなかったはずです。
そんな彼に声をかけたのが、鬼舞辻無惨でした。
無惨は、人間として67人を素手で殺した狛治の存在に興味を持ち、彼を鬼としてスカウトします。
狛治は無惨の一撃で瀕死に追い込まれますが、抵抗することもせず、無言で血を受け入れました。
それは、選択ではなく「諦め」でした。
「もうどうでもいい」
そんな思いだったと考えるのが自然です。
こうして、狛治は猗窩座としての人生を歩み始めます。
鬼となってからの彼は、「人間を喰うこと」よりも「強い相手と戦うこと」に執着するようになります。
それは、おそらく「力があれば守れた」「次こそは守れるはず」という執念のような想いの表れだったのかもしれません。
無惨に従うことも、鬼の本能に従うことも、猗窩座にとっては二の次。
ただ「強くなりたい」
その一心だけが彼を突き動かしていました。
この姿は決して褒められるものではありませんが、彼が「鬼になった理由」を理解するうえでは、欠かせない視点です。
まとめ
猗窩座は『鬼滅の刃』に登場する鬼の中でも、特に異質な存在です。
女を殺さないという明確な行動原理を持ち続けている点に、多くの読者が関心を寄せています。
作中では明言されていない部分もありますが、過去の出来事や内面の描写から、彼の選択には深い理由があることが読み取れます。
『鬼滅の刃』の世界において、ただ強さを求めるだけでなく、苦しみや後悔も抱えていた猗窩座。
彼が鬼になった理由は、単純な欲望や支配ではなく、喪失の痛みに根差したものだったと考えられます。
なぜ彼がそこまでして「守るべき存在」を守れなかったのか、その答えは彼の行動一つひとつに刻まれています。
読めば読むほど、猗窩座という存在の悲しみが浮かび上がるのではないでしょうか。
本記事では、その複雑な心の動きや、女を殺さないという掟の意味、そして鬼になった理由をひも解くことを試みました。
『鬼滅の刃』という作品が持つ奥深さを、少しでも伝えられていたら嬉しいです。
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